
マスター!助けてください!ボクのキャリアに、強制シャットダウンのカウントダウンが始まりました!

マジさん、穏やかではありませんね。どうされましたか?

会社の定例会議の議事録を僕が優秀なので任されてるんですけど、作るのに2時間もかかってしまって本来の仕事が進みません!


なるほど。かなり時間がかかっているのですね。

しかも時間をかけて完成した議事録は、誰にも読まれることなく通知の海に沈み、次の会議では、我々は何を話したのか?から始まる哲学問答。


もう限界です!

それは大変ですね。ちなみにAIは活用されていますか?

もちろんです!ChatGPTに「議事録を作成して!」とシンプルで洗練された指示を出しています!


ただ、使わないよりマシですが、絶妙にイマイチな箇所の微修正を始めると、気づけば全文解読不能になり詰んでしまいます。


状況は理解しました。よろしければ、いつものように私のラボで詳しくお話を聞かせていただけますか?

ぜひお願いします!
何のための議事録?

状況を整理しましょう。

定例会議の議事録作成に2時間もかかっている。時間をかけても議事録は活用されず、AIを使っても上手くいかない。

こういうことでよろしいですね?


はい!

まぁこの程度の逆境、僕のポテンシャルを解放する起動スイッチに過ぎませんけどね。

で、どうすればいいんですか?

では、単刀直入に、マジさん、議事録は会議後1分で共有してください。

い、1分ですって!?

マスター、ボケて時間感覚を失ってしまったのですか!

どんなに妥協して作っても30分はかかります!

それは、議事録を「完璧な記録」と捉え、作ること自体が目的化しているからです。


な、議事録はどう考えても記録ですよ!

私が言いたいのは、議事録の役割が、会議の最も重要な価値である「決定事項」と「アクションプラン」をテキストで残し、参加者全員の認識をズレなくそろえることだということです。


認識をそろえることが議事録の役割?

はい。そしてAIを使えば、それを会議後の1分で実現できます。

嘘だ!AIの出した凡庸な文章を、僕が2時間かけて珠玉の言葉に磨き上げているんです!

その聖なる作業が1分で終わるはずがない!

良い指摘です。

AIは高い精度で議事録を作成してくれるものの、たしかに完璧ではありません。

ですが、修正はせず、AIの出力をそのまま共有してください。


間違った情報を共有しろというのですか?

修正作業を一人で抱え込まず、会議の場で参加者全員で行うのです。

なんと非効率な!みんなの貴重な時間を奪うなんて!

一見そう思えますが、逆です。

会議の価値は、参加者の記憶が新鮮なうちに最大化されます。


会議直後なら、全員が話したことを覚えているので、認識のズレはすぐに修正できます。

1時間後でも会議の内容ぐらい覚えていますよ!

そうでしょうか?1時間後では皆それぞれの仕事に没頭して、議事録は読まれない通知と化します。

ギクッ!(今そうなってるかも…)

後からズレが発覚すれば、その手戻りのコストは計り知れません。

その場の全員での認識のすり合わせは、未来の数時間、いえ、数日間の無駄を防ぐ効率的な投資です。


う、そういえば以前会議で決定したことを担当者が勘違いして、プロジェクトが大炎上したことがありました。

仕事が遅くなる原因の9割は「やり直し」であると思ってください。「やり直し」は「認識のズレ」から生まれます。


そこまで言いますか!

ええ。例えば、従業員10万人の企業400社を対象とした調査では、従業員間のコミュニケーション不足によって、1社あたり年間平均6240万ドルの損失が発生したと報告されています。


コミュニケーションの問題だけでですか?

でも、そもそも議事録じゃなくて口頭で何度も確認したらいいじゃないですか。

口頭伝達も危険です。ハーバード大学の心理学者たちが行った、いわゆる伝言ゲームの実験があります。

ある絵の内容を最初の人が口頭で説明し、それを次々に伝えていくシンプルな実験。

わずか5〜6回の伝言を経ただけで、細かい情報の約70%が失われてしまったのです。


伝言ゲームはたしかに上手くいかないイメージですが、その裏付けがあったなんて。

ちなみに、伝言の過程で起きる内容の変化には、その人の思い込みの影響も観察されました。


思い込みが情報を歪める、間違った情報が伝わる、そしてやり直しが起きるってことですね。

その通りです。

分かりましたよ。ボクの考えが浅はかでした。

では、議事録を1分で作る方法を教えてください!
実践編:スマホと無料AIで実現する「1分議事録」作成

では、私が様々なやり方を比較検証してたどり着いた、議事録作成術をお見せします。

まず使うAIツールですが、特別なものは必要ありません。

スマートフォンに標準で入っている録音機能と、Googleが提供するGoogle AI Studio。この2つだけです


Google AI Studioとは、Googleが提供する高性能な生成AIプラットフォームで、なんと無料で使えます。


これに音声データを読み込ませて、議事録を生成させるのです。

無料で!それは素晴らしい!

では、具体的な流れを説明します。

ステップは3つです。ステップ1、スマホで会議を録音する。ステップ2、Google AI Studioで議事録を出力する。ステップ3、全員で議事録を確認・完成させる。

非常にシンプルです。


では、実際にやってみましょう。まずステップ1、会議の録音です。


オフライン会議なら、テーブルの中央にスマホを置くだけ。

オンラインで参加する人もいるなら、パソコンのスピーカーから音声を出し、それをスマホで録音します。


特別な機材は不要です。

最も手軽な方法で会議を音声データとして記録してください。

今回は、すでにある録音データを使ってみましょう。

でしたらマスター!僕が今日録音した会議のデータがあります!


議事録を作るときに聞き返せるようにこっそり録音しているんです!

次からは許可をとって録音してください。

では、ここからが本番。ステップ2、「Google AI Studioで議事録を出力」です。


ここではAIに渡す指示、プロンプトを使います。

ありがとうございます!

会議が終わったらその場で、録音した音声データをGoogle AI Studioにアップロードします。

まず、WebページからGoogle AI Studio(リンクはこちら)を開いてください。この画面が表示されるので、画面左側にある「Chat」を選択します



次に、画面右側に記載のモデル名が「Gemini 2.5 Pro」になっていることを確認し、チャット欄に音声ファイルをアップロードします。


ここで使うのが、この「決定事項・ToDo抽出プロンプト」です。 (Google AI Studioはこちら)
議事録作成プロンプト
会議の内容から「決定事項とその背景」と「アクションプラン」を抽出し、参加者全員の認識を揃えるための議事録を作成するプロンプトです。(精度は落ちますがChatGPTでも利用可能です)

このプロンプトで議事録が?

ええ、このプロンプトを使うと、会議の内容から「決定事項とその背景」とToDoすなわち「アクションプラン」を抽出してくれます。


会議の最も重要な価値であるアクションプランは、誰が何をするのかが一目でわかるよう、担当者と期限付きの表にまとめる設計にしました。



会議の重要な部分を抜き出して、分かりやすくまとめてくれるんですね!

その通りです。使う際は、プロンプトの参加者情報の部分にこのように会議の参加者を入力してください。


誰が何をするのかをAIが識別しやすくなります。

さて、議事録が生成されました。かかった時間は40秒ですね。


すごい!いつの間に議事録が!

出力された議事録には、決まったこととその背景、アクションプランが記載されています。



アクションプランは、このように誰がいつまでにやるのかが明確になっていますね。

ちなみに会議中に期限が話されなかったアクションプランは、実施漏れを防ぐため、自動で「本日18:00まで」と記載されるようにしています。


必ず期限を入れてくれるのは地味に助かります!

そして最後のステップ3、この議事録を共有します。


何も修正せずにそのまま共有するんでしたね。

ええ。会議終了後、その場でこのAIが生成した議事録をプロジェクターや画面共有で映し出すのが良いでしょう。

共通の注目物にすると。

はい。そして内容の間違いや補足すべき事項を追記・修正します。その場でAIに指示するか、手動で修正します。

AIに修正させるなら、例えばタスクの担当者が間違っている場合、出力結果の下にあるチャット欄に、「2つ目のタスクの担当者は〇〇さんです」など、テキストもしくは音声入力で指示を出します。


先ほどの指示を入れると、このように2つ目のタスクの担当者が修正されました。


まさにAIが議事録作成の全てを代行してくれる感じですね!

手動で修正するなら、他人と共同編集できるツール、例えばGoogleドキュメントや、私がよく使うのは、チャットツールSlackの「canvas」機能がオススメです。

Google AI Studioのチャット右上にあるこちらのボタンから議事録のテキストをコピーし貼り付け、参加者に共有すれば、参加者同士で「ここ修正します」と話しつつ修正できます。



なるほど!全員で修正した方が早そうです。

ええ。Google AI Studioは音声認識の精度が非常に高いので、そもそも大きな修正はほとんど発生しません。

全員の手修正ですぐに終わるでしょう。

完成した議事録に全員の合意が取れたら、そこで会議は解散です。

これで議事録作成のための持ち帰り作業はゼロ、全員が同じ認識を持ってすぐさま次のアクションに進めるのです。

持ち帰りゼロ!ボクの議事録タスクも無くなりますね!

では議事録の精度を上げるコツを2つお伝えしておきます。1つは音源の品質を上げる、つまりマイク性能や録音環境に気を遣うこと。


マイクはスマホで十分ですが、当然、周りが静かな場所で音声を録音する方が作成される議事録の精度も高いです。

会社の会議室なら大丈夫そうですね

2つ目は会議のはじめに、参加者全員が自分の名前を発言しておくこと。AIの話者識別の精度向上に役立ちます。


例えば、会議の最初に『今日の参加者は鈴木さん、佐藤さん、田中さん』と言ったように、それぞれが自分の名前を言っておくのが良いでしょう。

AIが誰の発言か識別しやすくなる、ってことですね!

あとは、『いつまでにやるのか』期日を明確にすることも重要です。期日が曖昧な仕事も認識のズレにつながりますから。


わかりました!明日の会議から早速実践してみます!
なぜGoogle AI Studioなのか?AIツール比較と使い分けの極意

ちなみにですがマスター、今回なぜGoogle AI Studioを使ったのでしょうか?他にも議事録作成ツールはありますよね?

今回のAI活用法を選んだ理由は3つあります。

圧倒的な速度、完全無料であること、話者識別ができることです。


議事録の作成で重要なことは、会議後すぐにその場で認識を合わせることでしたね。


そのためには、Google AI Studioのように30分から40分程度の会議の録音データを1分以内に処理できる速度が不可欠です。

他のツールはもっと時間がかかると?

ええ。精度の高い議事録を作れる他の主要なツールでは、5分以上はかかってしまいます。

それでは、会議後の即時共有ができず、結局、持ち帰り作業が発生してしまいます。

それでは、また議事録が通知の海に沈んでしまいますね。

ただし、Google AI Studioにもデメリットはあります。


例えば、毎回打つプロンプトをテンプレートとして保存できないことや、送ったデータがGoogleのAI学習に使われてしまうため、機密性の高い会議には向かない可能性があることWeb会議と直接連携できないことなどです。


では、そういう場合はどうすれば?

その場合は、代替候補となるツールを検討する価値があります。例えば、PLAUDというサービス。


これはプロンプトをテンプレートとして保存できますし、WindowsパソコンならパソコンアプリでWeb会議の録音から議事録作成までを自動化できます。


それは便利そうですね!

また、組織全体でExcelやWordなどが使えるMicrosoft365を導入しているなら、そのツールの1つTeamsが最も強力な選択肢になります。


声紋を事前に登録することで、高い話者識別精度を実現しているのが特徴です。

声紋登録!自分の声を登録できるのはいいですね。

社内のチャットツールにSlackを使っている場合は、ハドルというミーティング機能で、簡単な議事録の自動生成が可能です。


なるほど、組織の環境にもよるんですね。

その通りです。他にも、Nottaなど有名なツールはありますが、


議事録作成の遅さやテンプレート機能の使いにくさの観点から、今回はGoogle AI Studioを、そしてその次の選択肢としてPLAUDやTeamsをおすすめします。
まとめ

今日の一番のポイントは、議事録の目的は完璧な記録ではなく、チームの認識を合わせることであり、そのためにAIの速度を最大限に活用することでした。


スマホの録音とGoogle AI Studioを使うのがおすすめです。コツは静かな場所と最初の自己紹介でしたね。

マジさん、これで大丈夫そうですか?

すみません…なんか涙が出てきちゃって…

いつも時間をかけて議事録を作ってもスルーされて、リマインドしても無視された時は、「ボク、いらないんじゃないかな」って思って悲しくて…

うぅ…みんな忙しいからどうしていいか分からなくて…

でも、これからは会議後にすぐに認識を揃えます。ボクが非効率な会議をなくすんです。マスター、見ていてください!マスターの教えを無駄にはしません!

マジさんの成長が楽しみですね。