マスター、聞いてくださいよ。
ボク最近ついに、AIを使いこなしてる側の人間になっちゃいまして。
寝ても覚めてもChatGPTと会話。
社内じゃ数少ない、AI人材として一目置かれてるんですよ!
日頃からAIを使っているのは、良いですね。
では1つ聞きます。
そのAIから、圧倒的な恩恵を受けている実感はありますか?
え、圧倒的?ですか…いや、便利は便利ですけど、そう言われると…ちょっと。
ふむ、AIを使っても、恩恵が感じられない場面があると。
そうですね…提案書作らないといけないときとか、AIに書かせると、それっぽくは仕上がるんですけど、なんていうか、「ChatGPT臭」が抜けないんです。
どこかテンプレっぽくて。
なるほど。
それで、AIに修正を何度頼んでも良くならなかったから、最後はぜんぶ自分で書き直す羽目になって…。
「これ、AI使わない方が早かったんじゃ」って…。
「AIを使わない方が早かったんじゃないか」、多くの人が一度は抱える悩みです。
ですが、まったく同じAIを使っていても、マジさんが作りたかった、刺さる提案書を、圧倒的なスピードで仕上げてしまう人もいます。
た、たしかに、後輩で、提案書とか企画書とか、ボクが3時間うなってるやつを、平気な顔で1時間くらいで出してるやついますね…。
って、あれ?
じゃあボクの「AI人材」ってポジション、もしかして虚構ですか…?
落ち着いてください、マジさん。
AIを圧倒的に使える人とそうでない人。
その決定的な差は、たった1つの認識の違いから生まれます。
え、なんですかそれ!
早く教えてください!
それは、AIを、「なんとなく頭の良いもの」と、捉えているか、それとも、「次の1語を予測する計算機」と、捉えているか、です。
次の1語を予測する計算機…?
あー、なんかAIは言葉を、予測してるみたいな、話は聞いたことありますけど…
「次の1語を予測する計算機」とは具体的にどういうことか。
それは、このあとお伝えしましょう。
重要なのは、そう捉えると、AIには仕組み上「3つの壁」があると気づけること。
えぇ、壁が3つも?
なんだか、急に難しそうに聞こえてきました…
いえ。
壁の正体さえ分かってしまえば、越えるのは簡単です。
今回は、多くの人が気づかずに足を引っ張られている「AIの3つの壁」と、その越え方をご紹介します。
その壁さえ超えてしまえば、圧倒的なAIの恩恵を受けられるわけですね!
その通り。
3つの壁をAIの仕組みから理解している人がやっているAIの活用法を、全部お見せします。
そして最後に、その中で一番効く「まずはこれさえやればいい」という方法もお教えしましょう。
AIの仕組みと「3つの壁」
ではまず、3つの壁を理解するために必要なAIの仕組み。
AIを「次の1語を予測する計算機」と捉えるとはどういうことか簡単にお伝えします。
次の1語を予測する計算機って、イマイチピンと来ないんですよね。
難しくはありません。
AIは、入力された言葉の後に「次にどの言葉が来そうか」を確率で計算して選んでいるだけなのです。
例えばマジさん。
「昔々あるところに」と聞いたら、次に何が来ると思いますか。
え、そんなの簡単ですよ!
「おじいさんとおばあさんが」でしょう!
そうですね。
今マジさんが頭の中でやった「次に来る言葉を選ぶ」作業。
AIもまったく同じことをしています。
文章の流れから「次に来るべき最も自然な言葉」を1つ選び、それを繰り返して、長い回答を組み立てているわけです。
へぇ!
ボクと自然に会話しているように見えても、全部「次の言葉」を1つずつ選んでるだけなんですか…!
複雑なことをやってるように見えて、実は結構シンプルなんですね。
ええ。
その「1個ずつ選んでいるだけ」という感覚が大事です。
実は、この「次の1語を予測する」ために、AIは3つのことをしています。
ひとつ、それまでのチャットの文章を読み込む。
ふたつ、読み込んだ文章の、どこが大事かに注意を向ける。
みっつ、次の1語を書き出す。
この「読み込む・注意を向ける・書き出す」を、ものすごい速さで繰り返しているのです。
読み込んで、注意を向けて、書く…
へぇ、ちゃんと段取りがあるんですね。
そして「AIの3つの壁」とは、この3つの作業それぞれにある限界のこと。
読み込める量の限界が、1つ目の壁「コンテキストウィンドウ」。
注意の向け方の限界が、2つ目の壁「アテンション」。
書き方の限界が、3つ目の壁「オートリグレッション」です。
ちょっと待ってください…!
えっと、コンテキストウィンドウ…?
に、アテンション、オートなんちゃら…って、全部初耳ですよ…!
名前は一見難しそうですが、内容は誰でも経験したことがある話、3つとも誰でもわかるように解説します。
それぞれ、なぜ壁として存在するのか、そしてAI上級者はどうやって壁を超えているのか、一緒に理解していきましょう!
1つ目の壁 コンテキストウィンドウ
さっそく1つ目の壁、「コンテキストウィンドウ」から。
この壁を理解していないと、AIを使えば使うほど言うことを聞かなくなります。
え、それは困りますよ!
そのコンテキストウィンドウって、一体何なんですか!
コンテキストウィンドウは、ひとことで言うと、AIが1つのチャットで扱える、情報量の上限のことです。
あ、上限があるんですね。
AIってなんでも覚えてる、天才だと思ってました。
いえ。
チャットのやり取りを重ねてコンテキストウィンドウが埋まってくると、AIは指示を守れなくなります。
例えばAIに「500字以内で」とお願いしたのに、いつの間にか1000字で返してくる。
「ですます調で書いて」とお願いしたのに、気づいたら「である口調」になっている。
マジさんも経験ありませんか?
たしかにあります!
言われてみれば、AIが指示を守らないのは、しょっちゅう起きてる気がしますね、コンテキストウィンドウが、そんな簡単に埋まっちゃうなんて。
AIも案外大したことないです。
それに実は、コンテキストウィンドウが、完全に埋まる前から、AIの性能は落ち始めているのです。
2026年に発表された研究で、コンテキストウィンドウが4割から5割、埋まった時点で、AIの正解率は45%も、落ちることがわかっています。
えっ、半分埋まっただけでそんなに…!
じゃあボク、性能が落ちたままずっとAI使い続けてたかも…
でも上限は来てないのに、どうして性能が落ちるのです?
そうですね。
コンテキストウィンドウを作業机と、考えると分かりやすいです。
AIとチャットのやり取りを、重ねることは、AIにとって作業机の上に、どんどん書類が溜まっていくようなもの。
ただ、机の広さには、限界があるので、書類が溜まるにつれて、見つけにくい書類が出てきます。
これがAIの性能の低下、やがて古い書類が机から溢れて、落ちていくというわけです。
な、なるほど。
たしかにボクの机も、大事な書類しか置いてないのに、溢れちゃうことあります。
でも、一体どうすれば…。
コンテキストウインドウが、埋まってしまう問題の解決策は、極めてシンプル、性能が落ちたと感じたら、新しいチャットに切り替えるだけです。
え、それだけ?
なんか拍子抜けですね。
でもマスター、チャットを切り替えたら、それまでの指示は全部、リセットされるんですよ?
またイチから説明し直すの、かなり面倒なんですけど…
おっしゃる通り、チャットを切り替えると、それまでの指示は消えてしまいます。
ですから、チャットを切り替える前にAI自身に「引き継ぎ書」を作らせます。
作り方は簡単。
同じチャット欄に、「次のチャットへ引き継ぐための指示を簡潔に考えてください」と入力するだけです。
あぁそれなら簡単!
引き継ぎ書とはたしかに盲点でした。
でも、チャットを切り替えたくらいで、本当に変わるんですかね?
机上の空論なのでは?
作業机だけに。
実際に違いをお見せしましょう。
たとえばAIに、新商品の提案書を作ってもらっているとして、提案書は「商品の概要」や「その特徴」「価格」「販売プラン」「期待される効果」と、全部で5つの章で構成されているとします。
あー提案書みたいな、長い文章作る時、同じチャットで最後までやりがちですね。
ええ。
こちらが、1章から4章まで書かせたチャットです。
最初に「箇条書きで」「各章500字以内で」と頼みました。
1章は、要点が箇条書きで1行ずつきれいに並んでいます。
ですが4章になると、ところどころ「・」が抜けて、文章が続くようになってきました。
文字数も、1章より明らかに長くて、500字は超えてしまってそうですね。
たしかに、1つのチャットをずっと使い続けてるとありがちかも…
そうですね。
このまま、チャットを切り替えずに、5章を書かせてみます。
結果はこのような出力になりました。
あちゃー、4章よりひどい!
「・」は使われなくなって、文字数も多い。
文字壁ってやつですねこれは。
ええ。
やり取りを重ねるうちに、はじめに指示した「箇条書きで」「500字以内で」という指示が漏れてしまった結果でしょう。
では次は、新しいチャットに切り替えた後に同じ5章を書かせてみます。
まず、このボタンから会話をやり直せるので、こちらを押して、先ほど紹介した引き継ぎ書を作ってもらう指示を送信します。
そして、できあがった引き継ぎ書をコピーして新しいチャットに貼り付け、続けて5章を出力させてみます。
しばらく待って、出てきた結果はこちらです。
おー!指示通り箇条書きで、整理されてるし、文字数も500字以内に、収まってそう!
そうですね。
同じ「続けて5章を書いて」という指示を出しても、コンテキストウィンドウが埋まっているチャットなのか、新しいチャットなのかの違いだけで、出てくる回答の品質は、ここまで変わります。
チャット切り替えるだけで、ここまで違いが出るとは…!
あ、でもマスター、チャットの切り替えが、大事なのはわかったんですけど、肝心の"いつチャットを切り替えればいいか"は、どう判断すればいいんですか?
良い質問ですね。
それはAIの性能の低下を感じたとき、例えば最初に頼んだ、箇条書きが崩れたり、文字数を守らなくなってきたりしたら、それが切り替えどきです。
AIの回答そのものが、チャットを切り替えるサインになるわけか。
ちなみに私は、性能の低下を感じていなくても、作業がひと区切りしたときには、チャットを切り替えるようにしています。
たしかに、区切りのいいところで、チャットを切り替えるのも、わかりやすくていいですね!
ええ。
やることは「指示が守られなくなったら、新しいチャットに切り替える」。
たったこれだけで、同じAIでも「賢く使える人」と「なぜか上手くいかない人」の差が生まれているのです。
2つ目の壁 アテンション
次は2つ目の壁、「アテンション」です。
アテンションとは、AIが入力された指示の中でどの部分が重要かを判断して、注意を向ける仕組みのこと。
アテンションを理解していないと、AIへの指示を丁寧に書きすぎてしまい、かえって回答が雑になっていきます。
えっ、丁寧に指示するほど雑に!?
ボクいつも頑張って細かく指示してるのに、それが裏目に出てるってことですか…!
その可能性はあります。
アテンションはたとえるなら、警備員のようなもの、警備が必要な場所が増えるほど、1か所あたりの警備はどんどん手薄になります。
たしかに1人で、何十箇所も警備しなきゃいけなかったら、流石に見切れないですね。
この「警備する場所」が、AIへの1つ1つの指示というわけです。
指示が少なければ注意は行き届きますが
指示が増えるほど注意が分散してしまい、見落としてしまうものが出てきます。
ボクAIにあれもこれもって、詰め込んで指示してました…
気遣いが足りてなかったです…
細かく指示を足すほど、やって欲しいことが無視される。
逆に「これはしないで」と禁止したことを破られる。
全部、注意が行き届かず見落としてしまった結果です。
うわぁ、全部経験ありますよ…。
この間も、「敬語で回答して」ってお願いしたのに、いきなりタメ口になって!
「まだそんな関係性じゃないだろ」って思わず返しました…!
「指示を増やすほど指示を守りきれなくなる」、これは最先端の賢いモデルでも、避けられないのです。
じゃあ、たくさん指示を出さない方がいいってこと?
でも、それじゃ、細かいニュアンスが伝わらないし…
一体どうすれば?
アテンションの壁を越えるには、“模範解答”を渡すのです。
模範解答…!?
うーん、それが注意の話とどう繋がるのか、あまりピンと来ないんですけど。
先ほどと同じように、警備の例で考えてみると、警備する場所が多い場合、1か所あたりの警備が手薄になる。
でも、1ヶ所だけを警備するなら厳重に見張れます。
模範解答を1つ渡すというのは、AIに「ここさえ見ればいい」と示してあげることなのです。
あ、なるほど。
模範解答1つで「どんな感じにすればいいか」わかるから、注意が分散しないってことか…。
でも、そんな簡単なことで本当にうまくいくもんですかね…?
では実際にお見せしましょう。
指示をたくさん詰め込んだ場合と、模範解答を1つ見せた場合を、提案文づくりの場面で比べてみます。
取引先の食品メーカー向けに、AI議事録ツールの導入提案文を書く、という場面でやってみましょうか。
まずは指示を詰め込むパターン。
「クライアント向けの提案文を、箇条書きは使わず、専門用語も避けて…」と、提案文作成の指示を10個ほどの条件と並べて送ります。
ボクいつもこんな感じです。
これくらい詰め込まないと、逆に不安で。
出てきた結果がこちら。
「箇条書きにしない」と指示したのに、途中からいつのまにか箇条書きになっています。
「専門用語は避けて」と言ったのに「スループット」のような言葉が混じっている。
並べた条件のうち、いくつかが抜け落ちています。
指示が多すぎると、こうなっちゃうのか、でもこれ、模範解答1つで変わりますかね?
実際に見てみましょう。
模範解答になる提案文を、こちらのバッククォートと呼ばれる記号で囲って貼り、「添付の顧客情報と以下の提案文を参考に、山田食品様向けの提案文を書いて」と伝えます。
え、指示はこれだけ!?
ええ。
ちなみに「```」で囲っておくと、どこからどこまでが模範解答なのか、AIがひとまとまりとして区別しやすくなります。
返ってきた結果がこちら。
最後まで箇条書きにならず、専門用語も出てきていません。
たくさん指示を並べたときよりも、こちらが思い描いていた完成イメージに、ずっと近いですね。
本当だ…!
ただ模範解答を渡すだけで、こんなに違うなんて…!
実際、Claudeを提供している、Anthropic社も、言葉で説明するよりも、適切な例を示す方がはるかに効果的、と公式に明言しています。
なるほど、兎にも角にも模範解答が命ってわけですね!
でもマスター、その模範解答は結局自分で作らなきゃですよね?
それが一番ハードル高そう…。
おっしゃる通り、模範解答は、自分で用意する必要があります。
ですが、AIを使うことで簡単に作ることができますよ。
え、その方法知りたいです!
どうやって作るんですか?
模範解答はまずAIに叩き台を作らせてから、人間の手で詰めていきます。
一定詰めたら、不完全でも模範解答として使ってください。
そして使いながら出てきた課題を、元に模範解答を改善していく、繰り返すうちに、模範解答は自然と育っていきます。
なるほど…!
使いながら育てていけばいいのか…!
初めから完璧を目指さなくていいなら、ちょっと気が楽です。
ええ 理想的な模範解答が完成すれば、次の提案書もその次も模範解答を渡すだけ、毎回細かな指示や修正をする手間が激的に減って。
作業が格段とラクになりますよ。
よし!これからAIに頼むときは、指示を並べるんじゃなくて、まず模範解答を1つ用意するようにします!
それがアテンションの壁を越える、一番の近道です。
模範解答を渡すだけで出力の質はガラッと変わります。
2つの壁に共通するコツ
さて、ここまで紹介した、1つ目の壁コンテキストウィンドウ、2つ目の壁アテンション、この2つの壁の越え方には、共通点があります。
マジさんは気づきましたか?
え、共通点なんてなさそうですけど。
いえ、共通点は、「AIに読ませる情報を選んでいた」ことです。
1つ目の壁では、新しいチャットに切り替えて、要点だけをAIに読ませました。
2つ目の壁では、細かい指示をたくさん読ませる代わりに、1つの模範解答をAIに読ませました。
あっ…!確かに、AIに必要なものだけを選んで読ませてました。
この「AIに読ませる情報を選ぶこと」を、コンテキストエンジニアリングと呼びます。
2025年6月、OpenAIの創設メンバーであるカーパシーらが、「AIに渡す情報を過不足なく整理して渡すことが重要」とXで語り、この考え方は一気に広まりました。
へぇ、AIに読ませる、情報の整理が大事なのか。
ええ。
そして1つ目の壁、2つ目の壁で身につけた「AIに読ませる情報を選ぶ」、コンテキストエンジニアリングの考え方は、いろんな場面に応用できます。
たとえば「AIに書かせた文章をチェックさせる時、同じチャットの続きではなく、あえて新しいチャットに文章を貼り直してチェックさせる」。
これもコンテキストエンジニアリングの応用です。
えっ、同じチャットの方が、流れもわかってて、話が早そうですけど?
流れをわかっていることが問題です。
同じチャットのAIは、いわばその成果物を作った本人。
「こう伝えたかった」という意図まで分かっているので、つい甘く見てしまいます。
自分で書いた作文を自分で採点するようなもので、客観的なダメ出しはできません。
あー、言われてみれば、いつもAIにレビューさせると、「問題ない」って言うばかりで、肝心のダメ出しは、いい回答が返ってこなかったかも…
流れを知らない別のチャットに、レビューを依頼する指示と、見てほしい文章だけを読ませる。
「何を読ませないか」を選ぶこともコンテキストエンジニアリングなのです。
なるほど、もうこれでAI上級者になれた気分です!
ただ、ここまでお伝えした「コンテキストエンジニアリング」だけでは、越えられない壁がもう1つ残っています。
3つ目の壁 オートリグレッション
さて最後の3つ目の壁、それが「オートリグレッション」です。
オートリグレッションとは、AIが次の1語を書き出す、その「書き出し方」の仕組み。
AIは1語書くごとに、ユーザーの指示だけでなく、AI自身がそこまでに書いた分まで、全部を読み返して、次の1語を決めているのです。
えっ自分で書いた分も、毎回読み返してるんですか?
はい。
そしてこの「毎回、自分の出力を含む全てを読み返す」仕組みが、2つの弱みに繋がるのです。
えぇ、弱みが2つもあるのか…
1つ目はなんです?
1つ目は、書き間違いや矛盾が、ずっと残り続けること、毎回全部を読み返すということは、やり取りの途中にある、AIの間違った回答や。
AIへの矛盾した指示などが、毎回読み返す対象として、残り続けるということです。
なるほど。
でも、後から「やっぱりこうして」って直せば、その間違った内容も消えるのでは…?
いえ、消えません。
訂正しても、それは読み返す内容に訂正のやり取りが追加されるだけ。
一度出力した書き間違いはやり取りの中に残ったままです。
結果、「やっぱりこっち」という指示が、その後ずっと、AIが1語を出力する度にAIが迷うノイズになり続けるのです。
あ…!
たしかに前に取引先へのメールをAIに書かせたとき、最初に日程を「14日」って入れて、
後で「やっぱ15日に変えて」って頼んだのに、
出力に14日が残ってたことがあって。
あれはオートリグレッションが理由だったんですね。
ええまさに、そして2つ目の弱みは、回答が長くなるほど、出力に時間がかかり、内容も雑になること。
1語出すたびに全部を読み返すわけですから、文章が長くなるほど読み返す量が増え、AIの負担は大きくなります。
うっそれも身に覚えが…
この間、経費精算を楽にするツールを、導入する企画書を、AIに書かせたんですよ!
前半は違和感なかったのに、後半になるほど、的外れな感じがして、AIに厳しく当たったせいだと、思ってました…
伝え方の問題ではありません。
文章を書く処理が、それだけAIにとって重いのです。
ですが安心してください。
このオートリグレッションの壁、AIの使い方次第で越えられます。
マスターがそう言うなら、間違いないですね!
その使い方気になります!
では、普段私がAIに出力させる際の一連の流れを実際にお見せしましょう。
まず重要なのは、「はじめに詰めきること」。
たとえば企画書なら、AIに企画書を作らせる前に、企画の中身や方向性を詰め切ってしまいます。
あー、なるほど。
はじめに詰めきっちゃえば、後から「やっぱりこうして」みたいなこと言わずにすむって訳ですね!
…けどマスター、その最初に詰めるってのが簡単にできたら苦労しませんよ。
ご安心ください。
その難しい「詰める」作業を、AIが手伝ってくれる仕組みがあります。
「Grill-me」というSkillです。
グリルミー?に、スキル?
わからない言葉が一気に出てきて、ヘルプミーです。
Skillとは、よく使う手順を、AIに覚えさせておく、仕組みのこと。
Grill-meはその1つで、こちらがやりたいことを、ひと言伝えると、AIがどんどん質問してくるのです。
こちらはその質問に答えていくだけで、やりたいことの、具体的な内容が固まっていきます。
質問に答えていくだけで?
本当にそんなことが、できるんですかね?
ええ。
では先ほどマジさんがおっしゃっていた、後半が的外れになってしまったという、経費精算ツールの企画書、この場でゼロから作ってみましょう!
お、リベンジって訳ですね。
やってやりますよ!
では、まずGrill-meスキルの準備から。
こちらのリンクからzipファイルをダウンロードして、Claudeのサイドバーにあるカスタマイズからアップロードしておくだけ。
あとは入力欄に半角の「/」を打って一覧からgrill-meを選び、やりたいことをひと言、雑に伝えます。
今回は「経費精算ツールの導入を提案する企画書を作りたい」と送ってみましょう。
だいぶざっくりですけど、大丈夫なんですか?
これで十分です。
するとAIの方から、質問が返ってきました。
ほんとだ!
「この企画書は誰に向けて書くものですか?」って。
しかも、答えの候補まで一緒に出してくれてる!
ここがGrill-meの良いところ。
ゼロから自分でひねり出すのではなく、AIが出した候補から選ぶか、少し直すだけ。
今回は社内の決裁者、部長、と答えて送ります。
するとすぐ次の質問が来ます。
この調子で質問がなくなるまで、答えていくだけです。
えーっと、次の質問は…
数分後
ふぅ質問多かったですけど、選択肢から選ぶか、ちょっと直すかするだけで、ぜんぶ終わっちゃいました…!
では固まった中身を見てみましょう。
誰に出すか、今の経費精算の何が問題か、ツールの導入にはいくらかかるか、など、
企画書作成時に、詰めるべきことが、ずらりと決まりました。
たしかにこれはすごい!
具体的な内容がカチッと、固まってるじゃないですか…!
ええ。
しかし、このまま同じチャットで「企画書を書いて」と続けることはオススメしません。
えっなんでですか?
せっかく詰めたのに。
このチャットには、選ばなかった案や、答える途中で迷った跡が、全部残っているからです。
先ほどお伝えした弱み①、覚えていますか?
あっ、書き間違いや迷った指示が、ノイズになって、引っ張られるってやつですね!
その通り。
だから、内容だけをドキュメントにまとめて、まっさらな新しいチャットに渡します。
ちなみに、私が普段このような文章を作るのに使っているのは、
「AIエディター」と呼ばれるCursorや、ClaudeCodeというツールで、パソコンの中のファイルにAIが直接書いてくれるものです。
ただ、少し専門的なので、今日は誰でも使えるGoogleドキュメントを使う形でお見せしますね。
お、それならボクでもすぐ使えそうです!
では、先ほどのチャットで対話で固まった内容を、「Googleドキュメントに書き出して」と頼むと、このようにドキュメントができました。
ドキュメントに残しておけば、AIが書いたものを、自分の手で微修正することも簡単です。
なるほど!
たしかに、ちょっとだけ内容変えたい時、AIに言うより手で直しちゃった方が早そうですもんね。
ええ。
では、先ほどgrill-meで詰めた内容をまとめたドキュメントを新しいチャットに渡して、こう頼みます。
「この内容をもとに、企画書前半の「4.導入するツールと選定理由」までを書いて」。
えっ前半だけ?
最後まで一気に出させた方が。
早いのでは?
いえ、さきほど言ったとおり、一度に長く書かせるほど、後半が崩れていく。
だから短く区切って、前半・後半と分けて書かせるのです。
あ、そうでした…!
では後半も書かせて、仕上がった完成形がこちらです。
現状の運用と、問題点に続いて、後半には、削減できる時間の試算や、導入にかかるコストまで、書いてあって、質の高い提案書になっています。
おお…!
導入スケジュールとか、最後の方まで、ちゃんと書けてる…!
ボクが同じチャットで、一気に出させてた時は、いつも後半がグダグダだったのに、全然違いますよ!
ええ、grill-meで、中身を詰め切って、AIに、長い出力をさせない、これは、どんなAIを使うときにも効く共通のコツです。
ボク、いつもいきなり「これ作って」ってお願いしてました。
次に何か書かせる時はまずGrill-meで詰めてみます!
ええ、それだけで、AIの出力は見違えるほど変わりますよ。
AI業界の最新トレンド
ここで最後にもう1つ、知っておくと面白い話を。
今、AIをとことん使いこなす人たちの間で、新しいキーワードが広まっています。
それが「ハーネスエンジニアリング」。
へぇ!
はーねす…?
ってあの大型犬とかに、付けるやつですか?
ええ、由来は同じです。
もともとハーネスとは、犬や馬に装着する「引き具」のこと。
胴体にベルトを回して、犬や馬の力をソリや荷物を引く「仕事」に向ける道具です。
えっと、それとエンジニアリングが、繋がるとどうなるのです?
ハーネスエンジニアリングは、AIにも同じように、仕事の道具を装着してあげることです。
たとえば、社内の資料にAIが自由にアクセスできるようにしておけば、人間がいちいち資料を渡さなくても、AIが必要な資料を自分で開いて読みに行ってくれるようになる。
へぇなるほど!
たしかに普通のAIって、チャットでやり取りする、ことしかできないですもんね、AIがパソコン勝手に、いじって作業するなんて。
そうですね。
実際、AIが賢くなるにつれて、人間の役割は「細かく指示を出す」ことから、AIが働きやすい道具や環境を整えることに変わってきています。
ってことは…ハーネスエンジニアリングが、できれば、ボクは、寝てても仕事が終わるなんてことも!?
十分あり得ます。
ちなみに実はマジさんも、すでにこの、ハーネスエンジニアリングの一部を実践していますよ。
え、ボクが!?
教えてもらった、コンテキストエンジニアリング、だけじゃなくて?
はい。
先ほど紹介した「Grill-me」スキルがまさにそれです。
スキルは、いわばAIの判断で自由に使える道具。
人間が毎回細かく指示しなくてもAIが正しい手順で動けるようにしておく、立派なハーネスの一部だったのです。
ボク、知らないうちに最先端を走っていたなんて…!
って、そうだ、最初に言ってた「まずはこれさえやればいい」って話は、結局何をやればいいんです?
まさに「Grill-me」を最初に使うこと。
まずはこれだけ覚えておけば大丈夫です。
あれでも、Grill-meって、3つ目の壁の道具ですよね?
なんでそれが一番に?
実はGrill-meは、3つの壁全てに効くからです。
先にやりたいことを固めれば、AIは間違った前提に、引っ張られない、
結果、やり直しが減って、チャットも短く済むから、コンテキストウィンドウも埋まらない。
最初に詰め切れば、指示を足さずに済むから、アテンションも散らない。
ひとつで3つ全部!?
なんだ、難しく考えなくても、AIにお願いする前に、まずGrill-me、それだけでいいんですね!
マスタークエスト
では、ここで、今回のマスタークエストです。
こちらからダウンロードしたgrill-meのスキルを、使ってみてください。
AIと対話して、やりたいことを詰め切るだけで、AIから返ってくる出力が、まるで変わります。
今回のまとめ
さて、今日の内容を振り返ってみましょう。
AIは「次の1語を予測する計算機」。
読み込んで、注意を向けて、書き出す。
ただ、これを繰り返しているだけでした。
でもその、それぞれに壁があるんですよね。
その通り、壁1、コンテキストウィンドウ、壁2、アテンション、壁3、オートリグレッション。
ただ壁の越え方はどれもシンプル、記憶が溢れる前に、新しいチャットへ切り替える、指示を並べる代わりに、模範解答を1つ渡す。
AIに書かせる前に、Grill-meで詰め切る、たったこれだけで、AIからの回答の質は激変します。
マスター。
今日の越え方、どれも拍子抜けするくらい簡単でしたね。
正直ボク、ずっと心のどこかで「AIを使いこなせるかどうかなんて、結局その人の頭の良さ次第だ」って思い込んでました。
後輩がボクの3時間を1時間で片付けるのも、才能の差なんだって。
認めるのが怖くて、見ないフリしてました。
無理もありません。
できないことがあると、誰しもつい自分の能力を、疑ってしまうものです。
そのことを自覚できるマジさんは、とても賢いと思いますよ。
ありがとうございます!
ボク今日ではっきり分かりました!
才能も頭の良さも関係なかった、ボクと後輩の、差はAIの3つの壁とその超え方を知っているかどうかだけだったんですね。
ええ、その通りです。
マジさん、AIを賢く動かすのに、特別な才能は要りません。
AIの賢さを決めるのはいつだってその使い方、そのことを、覚えていてください!
はい!
明日からAIの限界を、引き出して、れっきとしたAI人材になってみせます!
ええ、良い知らせを、楽しみに待っています。